ミルザとは、SNRI(セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬)に分類される抗うつ剤です。
脳内の"セロトニン"や"ノルアドレナリン"などの物質を増やすことで、うつ病の症状を改善する向精神薬となります。
さらにミルザは「痛み」を和らげる効果もあり、精神疾患の治療だけでなく痛み止めとして使われることもあります。
またミルザは効果がマイルドであり、副作用も少ないため安全性が高いです。

ミルザの特徴ミルザには、3つの特徴があります。

■効果・副作用ともに控えめ
■肝臓への負担が少ない
■痛みを抑える効果もある

ミルザはSNRIといって、「気分の落ち込みを改善する」「やる気を回復させる」という2つの効果でうつ病を治療する抗うつ剤です。
SNRIにはサインバルタなど様々な種類の抗うつ剤がありますが、ミルザはそれらの中でも効果や副作用が弱い薬とされます。
そのため単独でうつ病を治療することは難しいものの、少しだけ効果を上乗せしたい時にはミルザのような薬が用いられます。
特にミルザは肝臓にもほとんど影響を与えないため、肝臓が悪い方でも服用できるというメリットもあります。

またミルザはうつ症状の改善だけでなく、痛みを和らげるためにも用いられます。
それにより痛みをともなううつ病の患者さんや、がんによる痛みを緩和したい患者さんなどミルザは幅広い用途で使われる薬です。

ミルザの効果・効能人の脳は、"モノアミン(神経伝達物質)"によって様々な情報のやり取りをおこなっています。
モノアミンには、例えば次のような種類があります。

セロトニン　…　気分の落ち込みや不安を改善
ノルアドレナリン　…　やる気を改善

など

ですがうつ病を発症するとモノアミンの数が少なくなってしまい、脳の働きに異常が起きて気分の落ち込み・無気力などの抑うつ症状が現れてしまうのです。
そこでミルザはセロトニンとノルアドレナリン、2つのモノアミンを増やすことでうつ病の症状を改善する抗うつ剤となります。

モノアミンは脳内の「神経細胞」から放出されてから情報のやり取りをおこない、その後"トランスポーター"という物質により再び神経細胞へと回収されていきます。
しかしミルザには、トランスポーターの働きを阻害する作用があります。
するとモノアミンの再取り込みがおこなわれなくなり、脳内のセロトニンやノルアドレナリンの不足を解消できるためうつ病の症状を治療できるようになります。

服用方法・使用方法

ミルザの服用方法は、次のようになります。

■成人

1日25mgを初期用量として1日100mgまで漸増し、1日2～3回に分けて食後に服用

なお年齢、症状により適宜増減します。

■高齢者

1日25mgを初期用量として1日60mgまで漸増し、1日2～3回に分けて食後に服用

ミルザの注意点■自殺企図に注意
うつ症状がある患者さんには希死念慮(「死にたい」と思うこと)があり、自殺企図の恐れがあります。
このような患者さんがミルザの服用開始早期ならびに服用量を変更する際には、患者さんの状態および病態の変化を注意深く観察してください。
■副作用に注意
ミルザの服用により不安、焦燥、興奮、パニック発作、不眠、易刺激性、敵意、攻撃性、衝動性、アカシジア/精神運動不穏、軽躁、躁病などが現れることが報告されています。
また因果関係は明らかでないものの、これらの症状・行動をきたした症例において基礎疾患の悪化または自殺念慮、自殺企図、他害行為が報告されています、
服用中は患者さんの状態および病態の変化を注意深く観察するとともに、これらの症状の増悪が見られた場合にはミルザの服用量を増量せず、少しずつ減量して中止するなど適切な処置をおこなってください。
■処方量は最小限に留めること
自殺目的での過量服用を防ぐため、自殺傾向が認められる患者さんにミルザを処方する場合は1回分の処方日数を最小限に留めることとしています。
■家族の方
ミルザの服用により自殺念慮や自殺企図、興奮
、攻撃性、易刺激性など行動の変化および基礎疾患の悪化が現れるリスクなどについて家族の方にも十分説明をおこない、医師と連絡を取り合うようにすることとされています。
■自動車の運転などは控えること
ミルザの服用により眠気、めまいなどが起こることがあるため、自動車の運転など危険を伴う機械の操作をおこなう際には十分注意してください。
また患者さん自身が服用中にこれらの症状を自覚した場合は自動車の運転など危険を伴う機械の操作はおこなわないようにしてください。
■血圧の上昇に注意
ミルザの服用により高血圧クリーゼ、血圧上昇が現れることがあります。
服用中は必要に応じて血圧・脈拍数などを測定し、異常が認められた場合には減量、休薬または中止するなど適切な処置をおこなってください。
特に高血圧または心疾患のある患者さんは定期的に測定してください。

副作用

ミルザの副作用症状は、次のとおりになります。

循環器	頻度0.1～5%未満	起立性低血圧、頻脈、動悸、血圧上昇
循環器	頻度不明	血圧低下、上室性頻拍

精神神経系	頻度0.1～5%未満	眠気、目まい、ふらつき、立ちくらみ、頭痛、振戦、視調節障害、躁転、焦燥感、知覚減退(しびれ感など)、不眠、頭がボーッとする、筋緊張亢進、アカシジア・口部ジスキネジア・パーキンソン様症状などの錐体外路障害、不安
精神神経系	頻度0.1%未満	幻覚、せん妄、被注察感、聴覚過敏、自生思考

過敏症	頻度0.1～5%未満	発疹、そう痒感

消化器	頻度5%以上	悪心・嘔吐、便秘
	頻度0.1～5%未満	口の渇き、腹痛、腹部膨満感、胸やけ、味覚異常、舌異常、食欲不振、食欲亢進、口内炎、下痢
	頻度0.1%未満	飲水量増加

肝臓	頻度0.1～5%未満	AST(GOT)、ALT(GPT)、γ-GTPの上昇

泌尿器	頻度0.1～5%未満	排尿障害、頻尿、尿タンパク陽性
泌尿器	頻度0.1%未満	尿失禁

その他	頻度0.1～5%未満	けん怠感、発汗、熱感、発熱、悪寒、冷感、耳鳴、息苦しい、性機能異常(勃起力減退、射精障害、精巣痛、精液漏など)、トリグリセライドの上昇
	頻度0.1%未満	鼻閉、関節痛、浮腫(むくみ)、CK(CPK)上昇、脱力感、胸痛
	頻度不明	脱毛

※赤文字の症状が現れた場合、ミルザの服用を中止するなど適切な処置をおこなってください。

重い副作用症状

悪性症候群	動かず黙り込む、筋強剛、食べ物や水を飲み込むのが困難になる、頻脈、発汗など
セロトニン症候群	イライラ、不安、発熱、発汗、幻覚、錯乱、頻脈、ふるえ、ミオクローヌス(からだの一部がピクッと動く)
痙攣(けいれん)	からだが震える
白血球減少	細菌やウィルスに感染しやすくなる、高熱、悪寒、ふるえ
重篤な皮膚障害	発熱、紅斑、かゆみ、眼の充血、口内炎など
抗利尿ホルモン不適合分泌症候群	食欲不振、頭痛、吐き気、嘔吐、全身のだるさ
肝機能障害、黄疸	皮膚や白目が黄色くなる、発熱、全身のだるさ、かゆみ、コーラ色の尿
高血圧クリーゼ	血圧が収縮期で80以上、拡張期で120以上、頭痛、不安、息切れ、鼻血、発汗、動悸、胸の痛み、体重減少

注意点

ミルザとの併用禁忌薬は、次のとおりになります。

併用禁忌■モノアミン酸化酵素阻害剤
他の抗うつ剤との併用により発汗、不穏、全身のけいれん、異常高熱、昏睡などの症状が現れることが報告されています。
モノアミン酸化酵素阻害剤を服用した患者さんがミルザを服用する場合には、少なくとも2週間の間隔を置いてください。
またミルザからモノアミン酸化酵素阻害剤に切り替える時は2～3日間の間隔をおくことが望ましいとされています。

エフピー

ミルザを服用できない方■ミルザの成分ミルナシプランに過敏症(アレルギー)の既往歴のある患者さん
■モノアミン酸化酵素阻害剤を服用中の患者さん
■尿閉(前立腺疾患など)のある患者さん

ミルザとの併用に注意が必要な薬■アルコール
他の抗うつ剤との併用により、お互いに作用を強め合うことが報告されています。
■中枢神経抑制剤
併用によりお互いに作用を強め合う恐れがあります。

バルビツール酸誘導体

など
■降圧剤
併用により降圧剤の作用が弱まる可能性があります。

カタプレス

など
■リーマス
他の抗うつ剤との併用により、セロトニン症候群が現れることが報告されています。
■5-HT1B/1D受容体作動薬
他の抗うつ剤との併用により高血圧、冠動脈収縮が現れることが報告されています。

イミグラン

など
■メチレンブルー
併用によりセロトニン症候群が現れる恐れがあります。
■ジゴシン
ジゴシンの静脈内投与との併用により起立性低血圧、頻脈が現れたとの報告があります。
■アドレナリン・ノルアドレナリン
これらの薬(特に注射剤)との併用により、心血管作用(血圧上昇など)を強める恐れがあります。